世界銀行グループおよびEcofysは5月26日、世界の炭素価格制度の現状についてまとめた報告書、"Carbon Pricing Watch 2015"を公表した。同報告書によると、排出される炭素量に応じて排出価格を設定する炭素価格制度の市場規模は全世界で500億米ドル近くに達したという。
これは、世界各地で実施されている既存の炭素税制度の140億米ドルに加え、新たに韓国で始まった排出権取引制度や米国カリフォルニア州、カナダのケベック州のキャップ・アンド・トレード制度の拡大により、世界の排出権取引制度の市場が2014年の320億米ドルから2015年には340億米ドルまで増えたことが起因しているとのことだ。
世界銀行グループの副頭取を務めるRachel Kyte氏は「チリやメキシコなどの国々が炭素税を導入するなど、炭素価格制度は明らかに勢いを増している。炭素価格はもはや導入するかしないか、いつ始めるかといったことは問題ではなくなっている。12月にパリで開催予定の気候変動サミットに向け、企業と政府はこれまで平行線を辿ってきたが、現在となっては、どのように、そしてどれだけ早く正しい炭素価格を設定できるかを協同で模索している。もはや炭素に価格を設定することは避けられなくなってきている」と語る。
同報告書は、ここ10年間で炭素価格制度の市場規模は着実に拡大していると指摘しており、2014年の年初以降の広まりを肯定的に評価している。炭素税の仕組みはフランス、ポルトガル、メキシコで始まり、チリでも法案が通過した。また、韓国では排出権取引制度が実施されたほか、中国では湖北省、重慶市においてキャップ・アンド・トレード制度の試験的運用が始まっており、2016年には国全体の排出権取引制度が開始する予定だ。さらに、カナダのオンタリオ州も炭素税制度の導入を計画しており、カリフォルニア州やケベック州の制度と連携していく予定だ。
この動きは世界中で広まっており、2015年には世界の温室効果ガス排出量の約4分の1を担っている約40ヶ国と20以上の都市、州、地域が炭素価格制度の導入を進めているとのことだ。
なお、同報告書は今年公表予定の詳細な報告書”State and Trends of Carbon Pricing 2015”の簡易版で、他にも民間セクターによる炭素税の取り組みも紹介されている。興味がある方は下記からダウンロード可能。
【参照リリース】Carbon Pricing Initiatives Valued at Close to US$50 billion
【レポートダウンロード】Carbon Pricing Watch 2015
【機関サイト】World Bank Group
【企業サイト】Ecofys
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