中国では遺伝子組み換え食品(GMO)をはじめとした食の安全性に対する市民の意識が急速に高まりつつある。そんな中、今年の4月には中国の一般市民らが政府、民間企業に対して商品の安全性に関する証明書類の開示を求めるという訴訟が起こっている。
ロイターの記事によると、訴訟の対象となったのは米バイオ化学大手のモンサントが販売している除草剤「ラウンドアップ」で、同裁判の原告3名は、政府の農業部に対して27年前にモンサントが提出した同商品の毒性に関する報告書の開示を求めているとのことだ。今回の訴訟の背景には、世界保健機関が今年の3月に発表した報告書の中で、ラウンドアップに発がん性成分が含有される可能性が高いと指摘していることがある。
中国政府側はモンサント社の企業秘密を侵害するとして当該書類の開示を拒否しており、モンサント社も過去数十年に渡りラウンドアップの活性成分であるグリホサートの安全性が十分に立証されており、世界保健機関に対し報告書の撤回を要求しているという。
ロイターは、現在の中国政府は将来の食糧安全保障を見越して、現状は栽培を禁止しているGMOに対する世論を肯定的な方向に導こうとしているタイミングでもあると分析している。現在中国で開発中のGMOの種子の中には、このモンサントのグリホサートに対する抵抗力があるものも含まれるとのことだ。
透明性向上への取り組みを宣言している中国政府に対し、積極的に圧力をかけて情報開示と透明性の向上を求める市民活動家の動きはここ数年活発化しており、今回の裁判もその一例に過ぎない。しかし、今回の訴訟は一般市民と政府間で展開するに留まらず、問題視されている商品を販売する外資系大手企業が関与していることから、企業の責任を問うことにもつながっている。
かつて中国では環境や社会規制がそれほど厳しくないことを背景に多くの企業が様々な環境汚染、人権侵害などの問題を引き起こしてきたが、今や中国の消費者の意識は大きく変わりつつあり、社会的責任や透明性を意識する重要性はますます高まってきている。
【参照記事】Chinese citizens sue government over transparency on Monsanto herbicide
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