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【スイス】ネスプレッソのCEOが語るCSV戦略の重要性とそれを実現する方法

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 ネスプレッソのCEOを務めるJean-Marc Duvoisin氏は2月23日、今年5月にニューヨークで開催予定のShared Value Leadership Summitでの講演に先立ち、なぜCSV(Creating Shared Value:共通価値創造)が企業にとって必要不可欠なのか、そして同社の展開するNespresso AAA Sustainable Quality™ Program(ネスプレッソAAAサステナブル品質プログラム)が、どのようにコーヒー農家コミュニティに対して良い影響を生み出しているのかについて、インタビュー形式のプレスリリースを発表した。下記に、その内容のポイントをご紹介する。

ネスプレッソのリーダーとして、なぜ共通価値の重要性は高いのか?

 Duvoisin氏は、ネスプレッソのビジネスを持続可能なものにし、高品質なコーヒーという同社のブランドを守るうえでCSVは必要不可欠だとしている。農家に寄り添って働くことで初めて高品質なコーヒーを顧客に対して提供できるだけではなく、コーヒー豆の長期的な供給を確実にし、自社のビジネスを持続可能なものにしてくれると語る。

 また、同氏はCSVのアプローチはビジネスモデルと密接に結びついている必要があり、ネスプレッソのアプローチは常によりシンプルで、ステークホルダーへの悪影響を最小限にするように設計されてきたと説明する。

ネスプレッソの業界に影響を与える緊急の社会的課題は何か。また、共通価値のソリューションを通じてどのようにそれらの課題に対処できるのか。

 ネスプレッソにとって重要なサステナビリティ課題としてDuvoisin氏が挙げているのが、同社の高品質なコーヒー供給を実現している農家の生活を脅かす、社会・経済状況の変化や気候変動だ。具体的には、それらの影響による農家の生産性の低下や価格の不安定性の向上、通貨レートの変動などの問題を挙げている。

また、同氏は農家の高齢化と若年層離れのリスクについても指摘しており、コーヒー農業という仕事が魅力的であり続けるための方法を模索する必要性を指摘している。

組織内でどのように共通価値に向けたイノベーションを起こすのか。その事例を教えてほしい。

 CSVの実現に向けた組織における具体的なイノベーション方法と事例について、Duvoisin氏は昨年コロンビアで開始した、コーヒー農家向けの退職年金基金の取り組みを挙げている。これはコロンビア労働省やサプライヤー企業、フェアトレード・インターナショナルなどとの革新的な官民パートナーシップだという。

 また、同社の展開するAAA Sustainable Quality™ Program自体が、パートナーNGOのレインフォレスト・アライアンスとの協働による革新的なCSVの取り組みだとしたうえで、共通価値を創造し、良い影響を生み出すためには、パートナーシップが必要不可欠だと強調する。

社会的価値とビジネス上の価値の関連性について何を学んでいるか。

 Duvoisin氏は、共通価値のアプローチを自社のビジネスモデルに統合しようとすれば、ビジネスを加速させる革新的なソリューションが見つかるだけではなく、農家の人々に対する社会・環境面の価値も見つけることができると語る。

 同氏によれば、実際にネスプレッソのAAA Programに参加した農家は、参加していない農家と比較して、社会的状況が22.6%改善し、環境の状況が52%改善、経済的な状況が41%改善されたとの報告が示されているとのことだ。

 また、社会的価値とビジネス価値が結びついた具体的な事例として同氏が語るのが、コロンビアにおける地域パートナーのセントラルミル社との、コーヒー豆の品質向上に向けた共同出資の事例だ。この取り組みでは、それぞれの農家がコーヒーの実をコーヒー豆へ加工する代わりに1か所へまとめた工場で加工を行うことにより、コーヒー豆の品質を保ち、コーヒー豆の損傷率を大きく削減することに成功した。

 その結果、出荷前の品質チェックにパスできなかったコーヒー豆の割合を約50%からほぼ0%まで低下させることに成功し、農家は以前の2倍ものAAAレベルのコーヒーを生産できるようになり、純収益が17%増加し、農家の生活レベルが改善されたとのことだ。

 さらにこの取り組みは収穫期における農家の人々の労働時間を4時間以上減らすことに繋がり、農家の人々は余った時間を利用し、家族と共に農場の管理に時間を割けるようになったという。また、環境面からみると、セントラルミル社は水使用量を以前と比べて63%まで削減させることに成功したという。Duvoisin氏はこの成功事例をトリプル・ウィンと呼んでいる。

共通価値の実現に向けて、あなたが直面している最大の課題は何か。そうした課題を克服するためにどのような機会の展望を持っているのか、またこうした取り組みを独自に進めるのか、それともパートナーと共に進めるのか。

 Duvoisin氏は、共通価値の実現には時間と資源が必要で、忍耐強く、謙虚に適応と改善に取り組む必要があるとしたうえで、それは決して一人で行うことができず、パートナーが必要だと語る。また、ネスプレッソが実際に直面した課題としては、農家の人々にAAA Programへの参加を説得する難しさを挙げている。

 AAA Programへの参画にあたっては、これまでの仕事のやり方にプライドを持っている農家からの抵抗もあり、中にはネスプレッソの提案する方法が間違っており、自身のこれまでのやり方が正しいということを証明するためにAAA Programへと参画した農家もあったとのことだ。しかし、その農家も実際にプログラムに参加してみて考えが変わり、ネスプレッソが提供する支援やアドバイスの価値を理解してくれたことが最高の喜びだったと語る。

 いかだろうか。Duvoisin氏の言う通り、共通価値の創造は即座に実現できるものでは決してなく、多様なパートナーとの連携と長期に渡る地道な努力が必要不可欠だ。CSVを理論だけではなく実際に実践に移すことで多くの成果を挙げてきた同社の取り組みから学べる点は多い。インタビューの詳細についてより詳しく知りたい方は下記からどうぞ。

【参考サイト】Nespresso CEO explains how the company’s approach to creating shared value drive positive impact for coffee farmers
【企業サイト】Nespresso

(※写真提供:Leonard Zhukovsky / Shutterstock.com

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