2014年はグリーンボンド市場が大きく躍進した年となった。多くの企業や行政機関が環境プロジェクトに関する債権を発行し、投資家や資産運用会社らがこぞってそれらに飛びついた結果、2014年のグリーンボンド市場の世界で総額350億USドルに達した。
しかし、世界の債券市場は全体で91兆USドルあり、この新たな資金の流れが世界の環境問題に対処する上で十分なのかどうかを判断するのはまだ早計とも言える。また、多くのサステナビリティ・ESG投資の専門家らがこの動きを歓迎する一方で、このグリーンボンド市場の盛り上がりに対する冷静な見方もある。
ロイターは昨年末、"Green bonds sale triples to $35 billion worldwide in 2014 as finance bids to help climate"という記事の中で2014年のグリーンボンド市場の現状を詳細に分析した記事を掲載している。
同記事は2014年に販売された350億USドルのグリーンボンド債権のうち、それらの多くは仮に「グリーン」というラベルがなかったとしても、通常の債券商品との比較の中でいずれにせよ売れていた可能性があると指摘しており、必ずしも「グリーン」であることが直接的に投資家らを惹きつけたわけではないことを示唆している。
また、現状の「グリーンボンド」が本当に投資家の期待する通りに環境に配慮されたものであるかどうかを判断することは難しく、多くがあくまで自主的な基準に基づいて「グリーンボンド」と名付けられている点についても指摘しており、「グリーンボンド」は債券を販売するための単なるマーケティング戦略だという印象を与えないようにするためには、それらの債券が本当に環境プロジェクトへの投資を簡単にしてくれるものだということを示し続ける必要があるとしている。
同記事内ではセルサイドの動きとして、ステート・ストリート社が初のグリーンボンド・インデックス・ファンドとして米国証券取引委員会に登録されたほか、昨年7月以降、立て続けにバンク・オブ・アメリカ、スタンダード&プアーズ、バークレイズMSCIが、それぞれグリーンボンド・インデックスを開始した件について触れているが、こうした動きに合わせて、社債や地方債の発行者らは環境に配慮した投資をしたいという債券購入者側のニーズを掴み、自身の債券にこぞって「グリーン」というラベルを付けはじめているのだ。
さらに、ロイターは2014年のグリーンボンド市場の動きとして、よりリスクの高い債券が増えた点についても触れている。従来、グリーンボンドは世界銀行のようなAAA評価を受けている機関からの発行に限られていたが、昨年は行政機関やジャンクと評価されている企業らが発行したグリーンボンドが増えたのだ。
ジャンク格の企業によるグリーンボンド発行の最初の波として紹介されているのは、昨年の8月に米国ニュージャージー州プリンストンの電力会社、NRG Energy社がカリフォルニア州の風力発電会社、Alta Wind Energy Centerに対する支払いのために、5億USドルの優先債券を発行した事例だ。Abengoa社がこの動きに続き、高利回りのグリーンボンド市場は10億USドルに拡大したという。
実際に、バンク・オブ・アメリカ・メリル・リンチの調査によると、同社のグリーンボンド・インデックスを構成している51の債券のうち社債は14を占めており、平均の格付は2010年時点のAAAから2014年9月時点でAA2まで落ちているという。
グリーンボンド市場の歴史はまだ始まったばかりだが、債券を通じて環境改善に必要な資金を融通するというグリーンボンド本来の目的を実現するためには、市場の信頼性と健全な発展が鍵を握る。今後はグリーンボンドに対する明確な定義や投資家らに対する更なる透明性も求められそうだ。
【参考サイト】Green bonds sell big in 2014 as finance bids to help climate
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