米国では毎日1人あたり約1.8キロもの廃棄物を生み出している。米国環境保護庁の調査によれば、米国では過去30年間でリサイクルプログラムの数は激増したにも関わらず、米国全土の廃棄物の総量である1億3500万トンの半分以上の廃棄物が、依然として最終的にごみ処理場に送られているという。
こうした状況を変えるべく、米国化学メーカー大手のダウ・ケミカルは、パッケージングに関する業界団体のFlexible Packaging Association、廃棄物管理サービスのRepublic Services、リサイクル事業を手掛けるAgilyx、Reynolds Consumer Product、カリフォルニア州シトラス・ハイツらと協働し、"Energy Bag Pilot Program"(エネルギー・バッグ・パイロット・プログラム)というリサイクルプログラムを実施した。
同プログラムは、現状のシステムでは簡単にはリサイクルできないプラスチックを収集し、燃料用の合成原油に作り替えるというプログラムで、プラスチックのライフサイクルにおける資源利用効率を最大化するのが目的だ。
具体的な内容としては、2014年6月から8月にかけて、カルフォルニア州シトラス・ハイツに住む約26,000世帯に「エネルギー・バッグ」と呼ばれる紫色のバッグが提供され、市民はこのバッグを活用してプラスチックごみやリサイクルに適さないごみの分別を実施した。バッグで回収されたものの中には、ジュースの容器やキャンディーの包装、プラスチック製の食品容器、冷凍食品包装、洗濯カゴなどが含まれる。
エネルギー・バッグは1週間ごとに各家庭から回収され、プラスチックをエネルギーへと転換するためのプラントへと送られた。プラントではAgilyx社が熱分解技術を使用してプラスチックから合成原油を生成し、この原油は精製後、ガソリンやディーゼル燃料、ジェット燃料、燃料油、潤滑油などに生まれ変わった。
この3か月に及ぶプログラムにより、下記の通り多くの成果が生まれた。
- 約8,000のエネルギー・バッグを回収
- 約2,7トンのリサイクル出来なかった製品をごみ処理場へ送るルートから回収
- 512ガロンの原油を生成
- 市民の30%が参加
- 市民の78%が次の機会があればまた参加したいと回答
シトラス・ハイツの住民からのサポートとコミットメントのおかげで、パイロットグラムは埋め立てゴミの削減、地域のエネルギー資源の増加、化石燃料への依存度合いの低下など、長期的な環境の改善に向けたポジティブな可能性を示したのだ。
このような結果を受けて、シトラス・ハイツ市長のSue Frost氏は「我々はエネルギー・バッグの取り組みに参加した米国初の自治体となったことを大変誇りに思う。同プログラムは、リサイクルが難しかったプラスチックを転換することでコミュニティ全体に利益をもたらし、またそれらのゴミにエネルギー資源として新たな命を吹き込む方法を示した」と語った。
また、ダウ・パッケージング・アンド・スペシャルティ・ プラスチックでグローバルサステナビリティ責任者を務めるJeff Wooster氏は「これは、我々が米国内における廃棄物処理手段を変える上で重要な試金石となる。このパイロットプログラムはリサイクル不能だったプラスチックの資源再活用が自治体レベルで可能であることを証明した。我々の協働による取り組みは、プラスチックをエネルギーへ変換することで、プラスチック廃棄物の減に向けた更なる一歩を生み出したのだ」と語る。
廃棄物に関する問題と聞くとスケールが大きく、自治体レベルでの解決手段の模索は困難というイメージが先行するかもしれない。しかしながら、シトラス・ハイツの事例のように、企業と自治体が協働し、テクノロジーの利用を模索することで、期待以上の成果を生み出すことも可能なのだ。プロジェクトの詳細については下記を参考にしてほしい。
【参考サイト】Energy Bag
【企業サイト】The Dow Chemical Company
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