WRIインドの推進するIndia GHG Program(インド温室効果ガスプログラム)およびボンベイ証券取引所は2月20日、インドの企業向けに購入電力から出る温室効果ガス排出量(スコープ2)の測定に関する新たな基準を公表した。今回が初となるGHGプロトコルのコーポレート・スタンダード(Corporate Accounting and Reporting Standard)の大幅な更新は、電力市場における再生可能エネルギーの急速な成長などに対応したものだ。
GHG プロトコル(The Greenhouse Gas Protocol Initiative)は、WBCSD(持続可能な開発のための経済人会議)とWRI(World Resources Institute)が中心となって世界中の企業やNGO、政府機関らと共に温室効果ガス排出に関する国際基準やツール開発を進めているイニシアチブだ。「スコープ2」は企業が電力購入などに伴い間接的に排出している温室効果ガスのことを指す。
世界全体で見ると電力・蒸気の生成、暖房・冷房からの温室効果ガスが排出量全体の4割を担っており、企業がスコープ2における排出量を正確に把握し、削減することは地球温暖化の抑制に向けた鍵となる。しかし、昨今ではグローバルのエネルギー市場の急激な変化によって企業に電力購入契約や再生可能エネルギー証書、オンサイト・オフサイト事業など豊富な選択肢が生まれており、スコープ2の計算、報告がより複雑化しつつあるのが現状だった。今回の新たな基準は、これらの異なる選択肢による排出量をどのように報告するべきかについての明確な指針を与えるものだ。
ボンベイ証券取引所のCEOを務めるAshish Chauhan氏は「温室効果ガス排出をめぐる課題は世界各地の政策決定においてより戦略的な重要性が増している。今回発表した新基準は気候変動の影響に対するインド政府の理解の高まりを反映したものだ」と語る。また、インドでは「気候変動の影響や温室効果ガス排出に対する投資家の関心も同様に高まっている」という。
新たに公表されたスコープ2基準は、23か国の民間企業、電力会社、政府機関、市民団体からの200人以上の代表らが協議し、4年の期間をかけて開発されたもので、レポート内にはマーズ、グーグル、フェイスブックなど既に新たな基準を採用している12社の事例も記載されている。
インドのGHGプロトコルのディレクターを務めるPankaj Bhatia氏は「インドの温室効果ガス排出量の42%はエネルギー生成によるもので、そのうち約76%が企業によって消費されている。今回の基準により、企業は排出削減目標に向けたエネルギー選択手段について正確に知ることができるようになる。明確な報告基準は、企業に低炭素電力の購入に対する明確なインセンティブを提供する」と語る。
また、約1年近くに渡りインドGHGプログラムのボードメンバーとして基準策定に関わってきたインフォシス社のコーポレートサステナビリティプランニング・ガバナンス担当副社長を務めるAruna Newton氏は「これはあらゆる業界において再生可能エネルギーの消費に関する報告に高い透明性と信頼性をもたらす大きなステップとなる」と語った。
今回インドGHGプログラムと共に新基準を公表したボンベイ証券取引所は、約5,600の企業が上場している世界最大の証券取引所でもあり、国連のSSE(Sustainable Stock Exchange:持続可能な証券取引所イニシアチブ)にアジアから最初に参加した取引所でもある。また、同取引所はS&P BSE Carbonex、S&P BES Greenexという2つのサステナビリティ・インデックスも開始するなど、インド企業に対してサステナビリティの事業戦略への統合を積極的に推進していた。今回の新基準の公表により、インドでは今後ますます積極的な温室効果ガス排出削減が進むことが予想される。
【参照リリース】Release: Emissions from Low-Carbon Electricity Purchases Now Accounted for
【団体サイト】India GHG Program
【企業サイト】ボンベイ証券取引所
【団体サイト】WBCSD
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