世界には"Neglected Diseases(顧みられない病気)"という問題があることをご存じだろうか?「顧みられない病気」とは、主に熱帯地方などを中心とする貧困地域で蔓延している寄生虫や感染症などの病気の総称を指す。これらの中にはマラリア、デング熱といった比較的有名な感染症からアフリカ睡眠病、シャーガス病といった先進諸国にはあまり馴染みのない疾患まで多くの病気が含まれ、貧困地域では毎年数多くの患者がこれらの疾患を理由に命を落としている。
なぜ"Neglected(顧みられない)"と名付けられているかというと、これらの疾患は先進国ではほとんど発生せず、世界の製薬会社もこれらの疾患に効く薬や治療法の研究開発を積極的に進めてこなかったからだ。しかしこれは単純に製薬会社の責任として片付けることはできない難しい問題だ。製薬会社は新薬の研究開発に莫大な投資が必要で、一つの新薬を市場に出すまでに15年~20年の時間をかけている。そのため、投資に見合う収益が期待できない貧困地域の市場に向けた新薬開発は大きなリスクを伴う上、収益が維持できなければ新薬開発への再投資ができず、結果として多くの人々の命を救う薬の開発ができなくなってしまうからだ。
しかし、そうした中でも世界の製薬会社らはこの問題を重要視し、積極的に研究開発に取り組み始めている。大手製薬会社らによる国際研究機関のIFPMA(International Federation of Pharmaceutical Manufacturers & Associations)は2月19日、これらの「顧みられない病気」を解決するための製薬業界による最新の研究開発プロジェクトの状況についてまとめた2014年版のレポートを発表した。
同レポートによれば、2014年には、マラリアやデング熱といった毎年何百万もの人々を苦しめているNeglected Diseases(顧みられない病気)の撲滅、制御に向けた治療に対する医薬品の研究開発プロジェクトは13%増加しており、現在186のプロジェクトが進行中だという。そのうち28プロジェクトについては初期段階の臨床試験が進められており、10項目に関しては既に効果や品質、安全性を確かめる最終試験段階へと突入しているとのことだ。
最終段階にある10のプロジェクトの内訳としては、結核に対するものが3つ、マラリアに対するものが5つ、デング熱に関するものが1つ、寄生虫疾患に対するものが1つとなっている。
また、186のプロジェクトのうち88%に相当する164についてはIFPMA会員企業と80以上の大学、公的および民間機関、NGOとの協働により展開されているほか、IFPMA会員企業は貧困地域における衛生設備の充実、疾患予防の啓発などのプロジェクトを支援するために40以上のパートナーシップに関わっている。
これらの取り組みに加え、製薬業界は、9つのこれまで「顧みられない病気」を抑制、撲滅するために、2012年から2020年まで毎年14億USドルを寄付することを決め、現在も継続している。これらの寄付は、WHOの「顧みられない病気」に対するプログラムを支援している。
世界の製薬会社が官民やNGOなどと協働しながら「顧みられない病気」の問題に対して積極的な取り組みを進めていることはとてもポジティブな変化であり、今後の成果が強く期待される。さらに詳しい情報について知りたい方は下記から。
【レポートダウンロード】Pharmaceutical R&D Projects to Prevent and Control Neglected Conditions
【団体サイト】International Federation of Pharmaceutical Manufacturers & Associations
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