使用済みスマートフォンなどの中古モバイル端末を再利用・再販売するビジネスモデルが構築できれば、端末利用によるカーボン・フットプリントを50%削減しつつ、同時に売上も拡大可能。また、消費者がスマートフォン端末を1年長く利用するだけで、CO2排出インパクトは31%も削減できる。そんな興味深い調査結果を英国の非営利シンクタンク、Green Allianceが明らかにした。
同社によれば、モバイル端末の中古市場は急成長しており、米国単体でも既に年間30億USドルの規模となっているという。同時に、新規販売は低調となっており、新規端末の売上の8%は、2018年までに中古端末にとって代わられると予想されているとのことだ。
Green Allianceが公表した報告書"A circular economy for smart devices"は、製造5年以内のノートパソコンやタブレット端末、スマートフォンを、どのように英国や米国、インドで修理、再販売し、利益を生み出すことができるかについて説明したものだ。
報告書の中では、企業が低価格で長持ちする端末という消費者の嗜好に適応するために活用できるビジネス戦略、および端末の再利用により、開発途上国の新たな消費者がどのようにインターネット接続端末の利益を享受できるのかについて説明されている。
また、同報告書は古い端末の寿命を延ばすための様々な方法についても触れている。例えば、ユーザーが新しいスマートフォンに乗り換えるときや、一連の中古製品販売サイトを見て端末の価値を調べているときなどを知らせてくれるソフトウェアなどだ。Green Allianceは、こうしたソフトウェアがあれば、再利用可能な状態のまま家庭で眠っている2800~1億2500万台ものスマートフォンに新たな命を与えられる可能性があるとしている。調査結果によれば、27~36%もの消費者が、ただ「どうすればよいか分からない」という理由だけで、そして17%の消費者が「面倒だから」という理由だけで、古くなった端末を持ち続けているという。
さらに、ハードウェア企業であれば、中古製品の中の価値ある一部の部品を活用して、新たな端末を再設計することも可能だ。報告書によれば、インドで既存のデバイスからディスプレイやカメラといった高価な部品を修理することは経済的であり、再設計であればより安く修理できるという。また、2年間使用したiPhoneは、もともとの価格の約3分の1に相当する170ユーロの価値を持ちうるとも述べられている。
同報告書はまた、スマートフォン端末はより炭素集約的となってきており、iPhoneのカーボン・フットプリントは5年前と比較して4倍となっている点についても触れている。合計すると、モバイル端末産業の炭素排出量は2013年における英国の運輸業界全体と排出量よりも多く、スマートフォンの普及によるカーボン・フットプリントの増加やE-waste(電子廃棄物)の問題は、さらなる規制への圧力となる可能性があるとのことだ。
スマートフォンはインターネットアクセスなど大きな社会的価値をもたらす一方で、一連のライフサイクルにおけるCO2排出、電子廃棄物など様々なサステナビリティ課題を抱えてもいる。そうした課題を解決する一つの方法として、中古端末の回収、再販までの新しいビジネスモデルの構築が挙げられる。中古端末市場の状況やより優れた再利用の方法についてなど、報告書内ではさらに詳細が述べられているので、興味がある方はぜひ参考としてほしい。
【レポートダウンロード】A circular economy for smart devices
【団体サイト】green alliance
(※写真提供:Hadrian / Shutterstock.com)
Sustainable Japanの特長
Sustainable Japanは、サステナビリティ・ESGに関する
様々な情報収集を効率化できる専門メディアです。
- 時価総額上位100社の96%が登録済
- 業界第一人者が編集長
- 7記事/日程度追加、合計11,000以上の記事を読める
- 重要ニュースをウェビナーで分かりやすく解説※1
さらに詳しく ログインする※1:重要ニュース解説ウェビナー「SJダイジェスト」。詳細はこちら