韓国では今年の1月12日からKRX(韓国取引所)で新たな排出権取引市場が開始されている。韓国政府は2010年4月に排出権取引制度の導入を含む低炭素グリーン成長基本法を採択し、同基本法に基づき2012年5月には「温室効果ガス排出権の割当及び取引に関する法律」を国会で通過させ、その後も制度の実施に向けて具体的な検討を進めていた。
1月から新たな始まったキャップ・アンド・トレード方式の排出権取引制度は、温室効果ガスの排出上限を課された韓国国内の大企業525社がKRXで排出量の差分を市場取引するという仕組みだ。これにより、韓国はヨーロッパに次いで世界で2番目に大きい排出権取引市場を持つことになった。
韓国は2020年までに温室効果ガス排出量をBAU(Business As Usual:対策がなされない場合に想定される排出量)比で30%削減するという目標を掲げており、2015年~2017年間の排出量を16億8,700万トン相当と制限している。同目標に応じて割り当てられた排出許容量を超える企業は、他の企業から排出枠を購入する必要がある。
なお、韓国の排出権取引市場は国際的な排出権取引市場との関係性はなく、参加企業は政策銀行3行を除いて新たな制度の適用を受けている管理事業者に限定されており、電力会社や化学会社、製鉄会社、自動車メーカー、電子機器メーカー、そして航空会社が向こう3年間の排出上限に合わせて排出枠を取引することになる。
取引の初日となる1月12日は7,860 ウォン(7.26USドル)で最初の取引が行われた。しかし、市場の開設から約1ヶ月が経過する現状では取引は盛り上がりを見せておらず、低調な状態が続いている。KRXによると、買手はいるものの売手が現れず、1月は1月16日を最後に取引が成立しない状況が続いているとのことで、結果として1月の中旬に取引価格は9,960ウォン(9USドル)まで上昇した。
この韓国の新たな排出権取引市場について、Thomson Reuters Point Carbon社のシニアアナリストAnders Nordeng氏はロイター通信に「制度が新しく参加企業が不慣れであるという点や、多くの企業が競合他社に自社の成長率を暗示することを避ける傾向にあることなどから、おそらく最初の6カ月の取引は少量になることが予想される」と語っている。
今回の取り組みにより、韓国はカザフスタンに続き国レベルで排出権取引市場を開始したアジアで2番目の国となった。アジアにおける先進事例の一つとして今後市場取引がどのように盛り上がりを見せていくのか、注目が集まる。
【参考サイト】REUTERS “South Korea launches world's second-biggest carbon market”
【参考サイト】REUTERS “Trading dries up in South Korea's new carbon market”
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