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【中国】新たな世界標準を目指す「自然資本未来新経済上海宣言」を採択

上海

上海で2月8日、9日、サステナビリティに関する研究者と実務関係者が集うサミット「未来新経済ー生態経済の持続可能な発展モデル」が開催され、経済発展と環境保護を両立させる新たな概念「自然資本未来新経済上海宣言」が採択された。会議を呼びかけたのは、世界中でオンライン教育講座配信を手がける徳稲グループのシンクタンク、徳稲グリーン投資研究院(IGI)。会場には、国連関係者、中国政府関係者、中国やアメリカの著名な大学教授、アメリカの投資銀行幹部など錚々たる顔ぶれが揃った。

自然資本未来新経済上海宣言の要点は、「プランC」概念と5つのアクションプランの提唱だ。プランCとは、従来提唱されてきた「プランA」と「プランB」に対する新たな概念。2003年に著名な環境思想家であるレスター・ブラウン氏は、経済発展を優先して環境破壊を顧みない方法を「プランA」と呼び、省資源型の社会システムに変え経済水準の現状維持を図る道を「プランB」とし世界に呼びかけた。今ではプランBは、経済が成熟し技術水準が高い、先進国を中心に普及しつつある。今回提唱された「プランC」は新興国版の「プランB」と言える。経済成長著しく消費が旺盛な新興国では、経済成長を犠牲にした上で環境保護を優先するという考え方は支持を得にくい。そこで、経済成長にある程度まで環境保護を織り込み、経済発展と技術発展を達成した後で本格的に省資源型の社会づくりを開始するという対案だ。プランCはもともと中国の同済大学経済・経営学部教授の諸大建氏によって提唱された概念で、諸教授は今回の宣言にも参加。プランCのCにはChina(中国)の意味もある。

一方、アクションプランとしては5つのポイントがテーマとなった。

  1. 自然資本のバランスシートの創設
  2. 財務資本には価値評価を図り資本の出し入れを把握するバランスシートという考え方が広く普及しているが、同様のものを自然資本においても作っていこうという。計測しづらい自然資本をバランスシートによって分析可能とすることで、効率的に自然資本を活用していくことができる。会議では、先行して自然資本バランスシートを導入している中国海南省三亜市の事例がモデルケースとして紹介された。

  3. GDPと自然資本の双方を同時に実現していく新たなモデルの確立
  4. 経済成長にはGDPという指標があるように、自然資本の成長の分野でも指標を確立し、GDPと自然資本をバランスを取りながら双方を伸ばしていく手法を模索していく。

  5. Public, Private, Peopleの連帯
  6. 中でも特にPublicとPrivateに焦点を当て「官民連携」を推進し、政府の力だけでなく、市場原理を用いて民間の資本力も生かしていく。

  7. 四象限理論
  8. GDPと自然資本を2軸にとったマトリックスフレームワークを用い、GDPの伸びが大きく、自然資本の伸びが小さい分野に優先的に自然資本強化のための投資を行っていく。経済成長のためのボトルネックとなっている自然資本を特定することで、自然資本を効率的に伸ばし、そこからの経済的なリターンを最大化させていく。

  9. 政府・自然資本専門企業・金融機関・ソーシャルセクター・仲介会社の連携
  10. 共同で規制ルールなどを策定し、各自の役割を設定していく。

宣言には中国内外の専門家が名を連ねた。"The value of the world's ecosystem services"概念の提唱者Robert Costanzaオーストラリア国立大学教授、Natural Capital Solutions社のHunter Lovins社長、SASB創設者の一人であるRobert Ecclesハーバードビジネススクール教授、前J.P.モルガン社マネージングディレクターのJohn Fullerton・Capital Institute代表、UNEPディレクターを務めたAshok Khoslaローマクラブ共同代表、ローマクラブのGraeme Maxton事務局長など国際的専門家や国際機関の責任者、ボアオ・アジア・フォーラムの龍永図事務局長、中国科学院科学技術政策及び管理科学研究所の王毅所長、中国科学院生態環境研究センターの欧陽志雲共産党委員兼副主任など中国内の関係者。

今回の宣言採択の背景には、従来、経済発展と環境保護を二律背反のものであると捉える考え方や、環境破壊の責任を一概に政府に帰する考え方へのアンチテーゼがある。経済成長と自然資本の双方を伸ばしていくために、経済活動を抑制するのではなく、市場原理を用いて積極的に自然資本分野への投資を促し経済成長を行っていくという今回の宣言の骨子は、とても斬新なアイデアだ。新興国では、先進国のような経済的な豊かさを手に入れたいという社会の欲求は高く、経済活動を犠牲にしても環境保護を重視するという考え方は支持が得にくい。経済成長と環境保護のあるべき妥結点を探っていくという今回の提案は現実路線だと言えよう。

<企業サイト>徳稲グリーン投資研究院

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