IPCC(Intergovernmental Panel on Climate Change:気候変動に関する政府間パネル)は11月1日、800名を超える研究者らにより13ヶ月間をかけてまとめられたIPCCの気候変動に関する第5次評価報告書”CLIMATE CHANGE 2014 SYNTHESIS REPORT Longer report”を公表した。
同報告書では、世界全体が気候変動に対して現状のまま抜本的な対策を取らないでいると、気候変動はますます悪化して人々の生活や生態系に重大な影響を与えるが、今後の取り組み次第ではその影響範囲を抑え、持続ある未来を作ることも可能だと述べ、改めて各国政府に対して一刻も早い具体的な行動の必要性を訴えた。
同報告書はIPCCにある3つのワーキンググループの研究成果と2つの報告書(Renewable Energy, Managing the Risks of Extreme Events and Disasters to Advance Climate Change Adaptation)をまとめたものとなっている。IPCCワーキンググループは以下の通り。
- ワーキンググループ?:気候変動の科学的根拠に関する研究
- ワーキンググループ?:気候変動の影響、適応と脆弱性に関する研究
- ワーキンググループ?:気候変動の緩和に関する研究
IPCCの会長を務めるR. K. Pachauri氏および各ワーキンググループのリーダーらは「1950年以降の調査で、二酸化炭素濃度は過去80万年で前例のないレベルまで高まり、多くの氷が溶け出し海面上昇は顕著になっている」と指摘する一方で「正しい科学的知識と理解、そして国際協力を含む世界中の強い意志と行動があれば、まだ気候変動を抑えることは可能だ」と述べている。
同報告書では、気候変動リスクに対処するためには気候変動への「適応」も重要だがそれだけでは不十分であり、そもそもの原因である温室効果ガスを様々な手段で削減していくことが重要だと述べており、また2030年まで対策が遅れた場合、人類の挑戦は難しくなると指摘している。
具体的には、各国政府が決めた2100年までの気温上昇を2℃以下に抑えるという目標を達成するためには、2050年までに2010年比で温室効果ガス排出量を世界的に40?70%削減する必要があり、2100年までには排出ゼロもしくはマイナスにしなければならないという。
また、報告書では2100年までの世界の年間成長率予測1.6?3.0%を0.06ポイント押し下げることになるが、気候変動がもたらすリスクに比べれば、このリスクは対処可能だとしている。
IPCCでは「低炭素社会への移行は技術的には実行可能だが、問題は適切な政策や制度の欠如にあり、対策が遅れれば遅れるだけ、気候変動へ適応や温室効果ガス削減にかかるコストは膨らむことになる」と警鐘を鳴らしている。
なお、同報告書は今年の12月にペルーのリマで開催されるUNFCCCの第20回締約国会議(COP20)をはじめ、気候変動対策に向けた様々な議論に活用される予定だ。報告書は下記からダウンロード可能。
【報告書ダウンロード】CLIMATE CHANGE 2014 SYNTHESIS REPORT Longer report
【参照リリース】Concluding instalment of the Fifth Assessment Report:Climate change threatens irreversible and dangerous impacts, but options exist to limit its effects
【団体サイト】IPCC
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