World Wildlife Fund(世界自然保護基金、以下WWF)が9月29日に発表したレポート”2014 Living Planet Report”によると、1970年から2010年にかけての40年間で、世界中に存在する哺乳類、鳥類、爬虫類、両生類、魚類の数が52%も減少したという。また同レポートは、この生物多様性の喪失は低所得国に偏っており、それは高所得国による資源消費の増大に関連していると指摘している。
同レポートでは、生物多様性の喪失以外の危機についても指摘しており、大気中の炭素濃度の上昇による気候変動が与えるエコシステムへの悪影響、高濃度の活性窒素によって引き起こされる土壌、河川、海洋の劣化、深刻化する水資源不足などだ。
WWFの会長兼CEOを努めるCarter Roberts氏は「我々人間は、我々の生活を支えてくれる地球の能力を少しずつ削っている。しかし、最悪の事態を避けるための知識やツールは既に持っている。限りある地球の限度に合わせた行動を始めなければならい」と語った。
同レポートでは、以下の3つの領域における評価を行っている。
- 1万種以上の脊椎動物の生息数
- 商品の消費、温室効果ガス排出などの人間によるエコロジカル・フットプリント
- 食料生産、淡水、炭素隔離などのバイオキャパシティ(環境収容力)
WWFの主任研究員を務めるJon Hoekstra氏は「同レポートには膨大なデータがあり複雑に見えるが、はっきりしているのはこの40年間で地球上の39%の野生生物および海洋生物、76%の淡水生物が絶滅したということだ」と述べた。
レポートでは、中・低所得国における一人当たりのエコロジカル・フットプリントはほとんど増加していないのに比べ、同時期における高所得国の増加率が著しく高いことも指摘されている。また、高所得国における生物多様性が10%増加しているのに対し、中所得国では18%、低所得国では58%もの減少を見せているという。特に減少率が著しいラテンアメリカ諸国においては生物の生息数が83%も減少したという。
WWFで再生可能エネルギー責任者を務めるKeya Chatterjee氏によれば、「高所得国は低所得国の5倍の環境資源を使う一方で、低所得国は生態系の破壊に悩まされている」とし、「つまり、高所得国は資源の枯渇をアウトソーシングしているのだ」と現状を分析する。
地球全体において持続可能な開発を実現させるためには、標準的な生活の質を維持したまま各国における一人当たりのエコロジカル・フットプリントを、利用可能な一人当たりのバイオキャパシティより少なく抑える必要があるということだ。
WWFは、レポートの中で結論として次の3つの行動を呼びかけている。
- よりスマートな食糧およびエネルギー生産方法へのシフトを促進
- 個人、企業、政府レベルでの責任ある消費によりエコロジカル・フットプリントを低減
- 自然資本を政策や開発における意思決定の基礎に置く
この40年で野生生物が50%以上も減少し、それは特に低所得国で深刻化している。そしてその原因を作っているのは高所得国の過剰な資源消費だというWWFの指摘を、我々一人一人が深く受け止める必要がある。レポートの詳細は下記からダウンロード可能。
【レポートダウンロード】2014 Living Planet Report
【団体サイト】World Wildlife Fund
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