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【金融】富国生命投資顧問社インタビュー「SRIファンドと投資先企業との新たな関係性」

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財務情報とともに社会・環境などの非財務情報にも配慮するSRIファンド。特に、以前「世界と日本のSRI・ESG投資最前線」でも紹介した、統合型(Integration)と呼ばれるSRIファンドが世界全体で急成長しています。

日本市場ではSRIファンドはまだ大きくはありません。ヨーロッパでは投資全体の49%が、米国では11%がSRIファンドで運用されている中、日本国内のSRIファンド割合は0.2%と非常に小さな存在です。日本市場のSRIは今後どのようになっていくのでしょうか。SRIを取り巻く昨今の状況と今後の展望について、早くからSRIファンドを組成してきた富国生命投資顧問株式会社(以下、富国生命投資顧問)にお話を伺ってきました。

富国生命投資顧問社インタビュー

1. 富国生命投資顧問でSRIファンドを始めたきっかけは?

「当社では2004年にSRIファンドを立ち上げました。当時日本では、1999年から2001年ぐらいにかけて「エコファンド」という環境をテーマにした公募SRIファンドがいくつか投入されていたのですが、その後にITバブル崩壊で株式相場全体が低迷したこともあり、この流れもしばらく途絶えていました。2003年になり日本がCSR元年を迎え再びSRIファンドの動きが活発化しました。資産の運用において社会的責任の考えを導入することは経営理念である「社会への貢献」に合致するものと考え、富国生命グループ全体でSRIファンドに取り組むことが決まり、当社が運用を担当することになりました。今日まで富国生命の年金保険の特別勘定を用いた“SRIファンド”や、年金や確定拠出年金向けのファンドのアセットマネジメントをしております。」

2. 富国生命投資顧問でのSRIファンド投資哲学は?

「当社では、“最も着実な成長を期待できるのは、社会的責任を果たすことによって持続可能な経済の成長を推進する企業”という考え方をSRIファンド運用の基本に置きました。これが当社の投資哲学です。この考え方は10年経った今でも変わっていません。持続可能な経済成長を推進するということで、従来の財務情報も引き続き重視し、それに加えて環境、社会、ガバナンスの視点をからも企業を調査分析し、投資銘柄を選定しています。」

3. SRIファンドのユニバース選定・対象銘柄選定のフローは?

「当社では、SRIファンドの独自色を出すため、当社自身でCSR評価を行うことを方針としています。しかしながら、当時CSR評価のノウハウがあまりありませんでしたので、イギリスの運用会社でCSR調査を経験された葎嶋真理氏とコンサルタント契約を結びました。葎嶋氏には今でもお手伝い頂いております。

当社ではまず、財務ユニバースを中心とした400〜500社ほどを調査対象とし、そこからCSRに優れた企業を抽出しています。CSR評価はアナリストやファンドマネージャーが企業へ直接訪問することを前提とし、独自に作成した質問票をもとに1社1社ヒアリングを実施しています。設立以来の訪問企業数は、現上場企業のうち327社(2014年6月現在)です。CSR評価は、マネジメント、マーケット、雇用、環境の4項目数十問についてヒアリングを行い、最終的にA, B, C, Dの4段階の評価(Dは取材できなかった企業)を付けます。ヒアリングは定性的な内容が多いため、必ず複数名でヒアリングを実施し、議論しながら評価を行うようにしています。質問票の内容は10年前に始めた時と基本的な考え方は変わっていませんが、見直しは随時実施しています。」

4. CSR評価で重視していることは何ですか?

「根底にあるのは、PDCAサイクルが回っているのかどうかであり、それをヒアリングでは特に確認しています。企業理念をはじめ雇用、環境について企業が定めた方針を企業全体に浸透させる仕組みが整っているかどうか、“持続可能な経済の成長を推進”するうえでの課題の特定と解決に向けたPDCAサイクルが回っているかどうかをCSR評価では重視しています。」

5. 企業とのコミュケーション・エンゲージメントの状況は?

「当社は直接訪問を前提としていますので、まずは企業に対して電話でアポをとるところからスタートします。当社は投資顧問会社として以前から財務面でのボトムアップリサーチによりIR担当の方々と常日頃接点がありますので、CSRのヒアリングも普通に受けて頂けるところが比較的多いです。ここでヒアリングを受けて頂けないとD評価になりますが、このD評価がつく企業の割合はここ数年では大きくは変動していません。多少、リーマン・ショックの直後にはヒアリングを受けて頂けない企業が増えたこともありましたが。

企業訪問をしている中で、近年変化を感じています。企業の中には非財務情報の重要性を感じていらっしゃるところも増えてきており、例えば環境面での新たなソリューションなどを企業の方が積極的にお話してくださる企業も増えてきています。私たちもそのような成果が汲み取れるような調査票づくりを進めていかなければとも考えています。

企業の情報開示についても大きな変化を感じます。10年前にSRIファンドを始めた際には、GRIのような評価軸に基づく総花的な情報開示がトレンドとなっていたので、そうしたトレンドを反映してマネジメント、マーケット、雇用、環境という4つの軸を設定しました。昨今は、このような基本的な取組みだけでなく、企業のマテリアリティ(重要性)についても評価するために、ヒアリングの際には、その企業内でのCSRの位置づけを伺うなど、一歩踏み込んだコミュニケーションをとるように心がけています。」

6. 統合報告の流れはどのような影響を与えていますか?

「大きな変化を感じています。統合報告になっても、たた単純にアニュアルレポートとCSRレポートを一冊にまとめただけでは読んでもらえないので、企業もどのような情報を出していくかをより考えるようになるでしょう。また、そもそも投資家向けに作られているアニュアルレポートに代わるものとして位置づけられる統合報告において、投資家がどんな情報を求めているのかがわからない企業が多いというのが現状だと思います。それが、スチュワードシップコードにより企業と投資家のエンゲージメントが進むことで企業も投資家が何を求めているかがわかるようにもなると思います。このように、企業の情報開示も改善されていくと感じています。」

7. 投資家サイドの環境変化は何かありますか?

「最近では、韓国やマレーシアなどのアジア諸国の公的年金基金がSRIを採用するようになってきているようです。日本に関しては、年金基金の中でSRIという概念はまだ盛り上がっていないように感じていますが、スチワードシップコードの導入などもあり、今後に期待したいと思います。」

8. 投資・評価者との付き合い方について企業に何かアドバイスはありますか?

「投資家との関わりを、コミュニケーションだと思って頂きたいと考えています。評価者側としても、ポジティブな部分を引き出したいと思っています。事前にレポートなども読みますが、ヒアリングをする中で、レポートでは書かれていないけれどアクションをされている良い材料も出てきます。まずはコミュニケーションを取るという気持ちになって頂きたいです。

また、悪い事象を隠すようなことは大きなマイナスです。評価者側も事前にいろいろな情報をチェックしていますし、その情報とヒアリング時の回答が大きく食い違ったり、納得の行く説明を頂けない場合は、評価者としてヒアリングで得た情報に信頼が置けなくなり、結果的に評価を高くつけることができなくなってしまいます。

企業側としても悪いことは積極的には言えないという部分もあると思いますが、そのような場合は、課題に思っていることをお話し頂きたいと思います。ヒアリングの際、評価を上げるために自社の優れた取組みだけに焦点を当てた回答をされ、その後で不祥事のニュースがあると、その企業に対する信頼度も落ちてしまいます。逆に、何が課題かということをお話し頂ければ、今後への期待を織り込んだ評価ができます。実際に、評価者側に対して質問をしてくる企業もあります。お互いがコミュニケーションを取ることでそれぞれの意思の疎通ができると考えていますので、双方にとって建設的なコミュニケーションの場だと捉えて頂ければと思います。」

変化を迎える投資現場

今回のインタビューを通じて、富国生命投資顧問からは、「今まさにCSR、SRIは大きな変化を迎えている」という言葉がたくさん出てきました。海外でSRIでの運用額が大きくなる中、日本でも統合報告やスチュワードシップコードの影響を受け、投資家、企業の双方において長期的な企業価値向上に向けた動きが大きくなっています。今後、企業は、海外・国内投資家から企業の長期的な成長に向けた要請や質問を受けることが増えていくと予想されます。投資家に対してのアカウンタビリティを有する経営者やIR部門は、財務情報だけでなく非財務情報の開示および説明が、さらには財務情報と非財務情報を統合させた戦略説明、エクイティ・ストーリーの作成が求められるようになります。

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