アップルが有害化学物質の削減、自然エネルギーの導入で業界をリード
国際環境NGOグリーンピースは3日、グローバルな電機メーカー16社について、有害化学物質使用の削減、製造における二酸化炭素排出削減や自然エネルギー利用の拡大、持続可能なサプライチェーンの構築に向けた進捗状況について、各社の2005年からの取り組みを包括的に評価した『グリーン・ガジェット―未来をデザインする』を発表しました(注1)。日本企業では、シャープ、ソニー、東芝、パナソニックの4社が対象となっています。
本レポートでは、アップルが上記三分野の環境対策について業界をリードしているものの、全体としては一層の取り組みが必要であることを指摘しました。電化製品の販売数は年々増加し、2014年には世界で25億個もの製品が販売されると予測されていることから、グローバルにビジネスを展開する電機メーカーには自社製品が招く環境汚染の増大に対し、緊急の行動が求められています。
携帯電話市場でシェア50%以上を占めるサムスン、アップル、ノキアらは、グリーンピースの働きかけを受けて、有害化学物質であるポリ塩化ビニル(PVC)と臭素系難燃剤(BFRs)の使用をこれまでに全廃しています。さらに、アップルは自社の全製品でこれらの有害物質を全廃しており、さらなる削減対策を行うことを発表しています。しかし、こうした取り組みは、いまだアップルのみに留まっています。一方、ファッション業界では、グリーンピースの働きかけを受けて、ナイキやH&M、ユニクロ(ファーストリテイリング)などファッションブランド20社が、自社製品の製造過程において、すべての有害化学物質の使用を2020年までに全廃すると宣言しています(注2)。電機メーカーにも、より多くの製品の有害物質を削減するとともに、環境汚染に関してサプライチェーンの透明性を確保することが求められています。
また、製造時における自然エネルギー利用についても、電機メーカー各社の取り組みは不十分です。多量のエネルギーを必要とする電機製品の製造は、石炭火力発電が主流となっている東アジアに集中しています。レノボとファーウェイは工場に小規模太陽発電を導入し、アップルはスマートフォンの部品工場を100%自然エネルギーにする計画を打ち出すなど前向きな取り組みを見せている一方、日本企業4社のうち、シャープ、パナソニックは太陽光発電モジュールのシェアの世界トップ20に含まれるにもかかわらず、製造段階における自然エネルギーの野心的な導入目標を設定していないなど、大きく出遅れています。工場ごとの取り組みからサプライチェーン全体での自然エネルギー使用への切り替えを進め、高い目標を据えなければ、二酸化炭素排出量の大幅な削減は不可能です。
グリーンピース・ジャパン気候変動・エネルギー担当の高田久代は、「画期的な数々の新製品をこれまで生み出してきた電機メーカーは、より環境に優しい製品の未来をデザインできるはずです。まもなく、9月15日に日本は稼動原発ゼロで1年を迎え、多くの市民は自然エネルギーの利用拡大を望んでいます。企業がどのような電源を選ぶかという『電源責任』に、今後大きく関心が高まるでしょう。有害物質フリーで、自然エネルギーによってつくられる持続可能な製品を、どの企業が真っ先に生み出せるか、イノベーションの競争はすでに始まっています。日本企業のリーダーシップを期待します」と語りました。
グリーンピースは、有害化学物質使用の段階的廃止などを電機メーカーに求めるために、対象企業から提供のあった公開情報に基づいて評価した『環境に優しい電機メーカー・ランキング』の発表を2005年から開始、2008年の第8版からは、有害化学物質に加え、エネルギー分野の取り組みを評価観点に追加、2011年の17版からは紛争鉱物や森林製品の調達についての評価観点を加える改訂を行っています。
注1)『グリーン・ガジェット―未来をデザインする』(英語)
注2)グリーンピース、高級ブランドの子供服からも有害化学物質を検出――新報告書で、ヨーロッパとアジアで購入した27点の調査結果を発表(グリーンピース2014年2月発表プレスリリース)
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