欧州委員会は6月20日、あらゆる規模の社会的企業に適用可能なソーシャル・インパクト測定のための新たなガイドラインを発表した。このガイドラインは社会的企業とパートナー組織や投資家、公共セクターとの対話を手助けするもので、ヨーロッパにある社会的企業がEuSEF(European Social Entrepreneurship Funds)やEaSI (Employment and Social Innovation programme)に対して資金提供を求める際にも役立てられる。今回のガイドラインは欧州委員会が設置した社会的企業に関する専門家グループ、GECESの保証済みだ。
欧州委員会で雇用・社会問題・インクルージョン総局の理事を務めるLászló Andor氏は、「我々は社会的企業およびソーシャル・インパクト投資を支援している。今回の新たなガイドラインは、社会的企業のEUからの資金援助を助長し、ヨーロッパにおけるソーシャル・インパクト測定の土台となるだろう。また、G7が進めているグローバルに適用できるソーシャル・インパクト測定のためのガイドライン開発にも大きく貢献することになる」と述べた。
また、欧州委員会で域内市場・サービス総局の理事を務めるMichel Barnier氏は、「今回の報告はSocial Business Initiativeの実行においてとても重要な一歩となる。ソーシャル・インパクト測定は社会的企業のエコシステムを支える役割を担いうるものであり、今回の基準は高い関心が集まりつつあるソーシャル・インパクト測定という分野に対して更なる明瞭さと信頼性をもたらすだろう」とその重要性について語った。
今回発表されたGECESの報告書の中では、全ての事例におけるソーシャル・インパクト測定をカバーできるような厳密な指標を考案することは難しいとしたうえで、企業の状況において柔軟な適用ができるよう、5つのステップに分けたソーシャル・インパクト測定基準が提案されている。
具体的にはソーシャル・インパクトの測定がidentify objectives(目標の特定)、identify stakeholders(ステークホルダーの特定)、set relevant measurement(関連指標の設定)、measure, validate and value(測定・確認・評価)、report, learn and improve(報告・学習・改善)の5ステップに分けられており、様々な社会的企業の異なるニーズに合わせて柔軟に適用できるようになっている。
ソーシャル・インパクトの測定は、資金調達という観点からみても非常に重要だ。例えばEaSIプログラムは、社会的企業はあくまで測定可能なポジティブ・インパクトに焦点をあててことを示さなければいけないと規定しているし、ソーシャル・アントレプレナー向けの投資ファンドEuSEFs(European Social Entrepreneurship Funds)も、資金提供を求める社会的企業に対してソーシャル・インパクトを測定するよう要求している。
また、今回の基準の発表は、急速に進化しつつあるソーシャル・インパクト測定の分野におけるベストプラクティスを促すだけではなく、異なる基準の乱立が生む重複コストを避けようとする狙いもある。
社会的企業やNPOなどがもたらすソーシャル・インパクトの測定手法については、現在SROI(Social Return on Investment)なども含めて様々なガイドライン・手法の開発が進んでいる。事業がもたらす財務上のリターンだけではなく、社会に対するポジティブなインパクトを測定することは、投資家や顧客、従業員などステークホルダーと対話をする際にも非常に役立つ。
また、ソーシャル・インパクトを測定するための過程においては必ずステークホルダーとのコミュニケーションが求められるため、測定結果はもちろん、測定プロセスそのものも事業活動の中身を改善していく上で有効だ。
現在EUは域内に横たわる社会課題の解決主体として社会的企業の育成や支援に力を注いでおり、2011年の10月に発表したSocial Business Initiativeを軸に様々な取り組みを進めている。ぜひ今後のEUの動きにも注目していきたい。
【参考サイト】EU
【参考サイト】GECES report "Proposed Approaches to Social Impact Measurement"(PDF)
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